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第345回 異邦人への宣教師

聖書=マルコ福音書5章18-20節(1-20節)

イエスが舟に乗られると、悪霊に取りつかれていた人が、一緒に行きたいと願った。イエスはそれを許さないで、こう言われた。「自分の家に帰りなさい。そして身内の人に、主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい。」その人は立ち去り、イエスが自分にしてくださったことをことごとくデカポリス地方に言い広め始めた。人々は皆驚いた。

 

 今回はマルコ福音書5章の「ゲラサ人のいやし」と言われている出来事の結果です。主イエスは、ゲラサの村人たちの「その地方から出ていってもらいたい」という強要を受け入れました。豚二千匹もの死という大損害に驚いた村人たちは、もうこれ以上イエスのゲラサの地での活動を認めなかったのです。大挙して来て、イエスに強要したのではなかったでしょうか。

 主イエスも、この状況を見て、このままで平穏な伝道活動をゲラサで続けることの無理を悟りました。そこで「イエスは舟に乗り」、カファルナウムへと帰ろうとします。その時です。主イエスによって悪霊から解放された人が走ってきて、「一緒に行きたい」と願ったのです。主イエスの弟子となって、主イエスと共に伝道しようという願いに突き動かされての行動でした。すばらしい献身者の誕生と言っていいでしょう。

 ところが案に相違して、主イエスはそれを許さないで、こう言われたのです。「自分の家に帰りなさい。そして身内の人に、主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい」と。

 「自分の家に帰る」。この男にとって非常に難しいことです。家族、身内の人たちに大きな迷惑をかけてきました。無数の悪霊・レギオンに取りつかれて、家族や身内の人たちは困惑しきっていた。何度、鎖につないで拘束しても振り切って、墓場に住みつき、大声で叫び、近隣の人たちに迷惑をかけてきた。正気になったと言っても、なかなか信じてもらえないでしょう。

 しかし、この男は主イエスの言葉に従いました。主イエスの元を去って自分の家に戻りました。しばらくは、だれもこの男の言葉を信じなかったでしょう。居づらかったでしょう。しかし、忍耐して、主イエスがなしてくださった恵みの業を、その生活を通して証していったのです。自分の変化を言葉で言っても信用してくれません。神との交わりを回復し、隣人たちとも次第に交わりをするようになりました。

 家族や身内の人たち、周囲の者たちが、この男の変化に気づくようになりました。「確かに変わった」と。そして、次第に受け入れられていきました。相当な時間がかかったでしょう。彼が悪霊から解放され、神の恵みの支配の元にあることを認めていったのです。彼の語る言葉が信じられ、受け入れられるようになりました。

 彼は、ここから伝道者としての活動を始めたのです。「主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい」と命じられた主イエスの言葉が生きるようになった。彼の住むゲラサの地は異邦人の住む地です。主イエスは、ユダヤ人だけでなく、異邦人の地にも福音を伝えることを願っていました。このゲラサの地でも福音の言葉を伝え、恵みのみ業を行おうとしていたのです。

 ところが、拒絶されてしまいました。しかし、彼はゲラサ人です。何処に行く必要もありません。彼は自分の住むゲラサ地域だけではなく、さらに広い範囲の「デカポリス地方」にも出かけていって、自分の同胞に、自分の身に劇的にドラスティックに起こった主イエスの救い、神の恵みの出来事を「言い広める」たのです。彼の過去が過去であるだけに、主イエスのいやしの出来事は多くの人に強烈に受け止められたでしょう。「人々は皆驚いた」と記されています。

 彼は、主イエスの派遣した異邦人への宣教師として良き働きをしたのです。マルコ福音書1章40-45節に記されている重い皮膚病を患っていた人は、主イエスの止めるのもかまわずにイエスのことを言い触らして、主イエスに迷惑をかけてしまいました。しかし、このゲラサの人は、主イエスの派遣した最初の異邦人への宣教師としてしっかり活動し、神の憐れみのみ業を告げ広めたのです。