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197回 神の望む生き方

聖書=詩編147編10-11節

主は馬の勇ましさを喜ばれるのでもなく、人の足の速さを望まれるのでもない。

主が望まれるのは主を畏れる人、主の慈しみを待ち望む人。

 

 主の2023年、新年、明けましておめでとうございます。この年も変わらずにホームページを続け、ショートメッセージもアップしてまいります。続けてご覧くださいますようお願いします。

 冒頭に「おめでとうございます」と記しましたが、わたしの心の奥底、本心は決して「おめでとう」とは言えない状況です。むしろ、悲しみと失望、怒りにさえ満ちています。昨年から始まったロシア・ウクライナ戦争は、なお続いており、死の淵に立つ人たちが多くいます。それだけでなく、この戦争に乗じて、これを絶好のチャンスとして日本では防衛費を大幅に増大させ、敵基地攻撃能力と継戦能力を増大させ、戦争へと前のめりになっている人たちが急増しています。戦時体勢の構築にのめり込んでいるのです。

 昔、「期待される人間像」という言葉が流行ったことがありました。これは一時のことではなく、いつの時代でも社会的に「期待される人間像」はあるのです。「AIに秀でた人」、「理数系の人」、「スポーツ能力のある人」、「お金儲けの出来る人」、「上役に忖度できる人」などではないでしょうか。それに加えて、現今は「戦争を許容する人」、「敵国を憎悪する人」などではないでしょうか。隣人への憎悪が期待されている時代になっています。

 今回は、上記の旧約聖書・詩編147編の言葉からお話しします。10-11節だけを掲示しましたが、お手持ちの聖書で詩編147編全体をお読みください。詩編147編は「ハレル詩編」と言われ、神を賛美し、喜び祝うおめでたい詩編です。捕囚になっていたイスラエルの民がバビロンから帰還して、小さいながらもエルサレム神殿を再建し、城門の扉が完成した時に、民が祝いの行列をしながら歌ったものと言われています。

 詩の内容はイスラエルの民を顧みてくださった全能の主を賛美する歌で、「神をほめ歌う」、「神への賛美」という言葉が繰り返されています。新しい年の初めに、この詩編を選んだ理由は神の恵みの事実を覚えたいからです。今の社会は暗いことばかりで、神の恵みを覚えることが困難な時代です。しかし、その暗さの中でも「ハレルヤ」(主を賛美せよ)と賛美しましょう。

 賛美の根拠は神の回復の恵みです。「主はエルサレムを再建し」と歌い出します。先ず、エルサレムの街々の回復と神殿再建の喜びを歌い上げます。続けて歌われるのは、傷ついている者をいやす神の恵みです。街と神殿の再建というハード面だけでなく、「追いやられた人々を集めてくださり」、「打ち砕かれた心の人々を癒し」、「貧しい人々を励まし」てくださるお方であると歌うのです。神が、傷つき、苦悩している人たち、しいたげられた者たちをいやしてくださいました。その故に、神が賛美されるのです。

 詩の作者は、さらに目を転じて自然の世界における神の祝福を謳います。「主は天を雲で覆い、大地のために雨を備え、山々に草を芽生えさせられる。獣や、烏のたぐいが求めて鳴けば、食べ物をお与えになる」。ここで歌われているのは、大自然を運行しておられる神の恵みの力です。神は、大地に雨を降らし草木を生えさせ、大地に生きるすべての生き物に必要な食物を備えてくださる、と歌います。そして、この大自然の祝福の中にわたしたち人も生かされているのです。

 そのゆえに、詩人は「感謝の献げ物をささげて主に歌え。竪琴に合わせてわたしたちの神にほめ歌をうたえ」と語りかけます。「主に歌え」は「応えよ」と言う言葉です。感謝して神に応えて生きるのです。神への応えとは、わたしたちの生き方、どのように生きるかです。

 「主は馬の勇ましさを喜ばれるのでもなく、人の足の速さを望まれるのでもない。主が望まれるのは主を畏れる人、主の慈しみを待ち望む人」と、詩人は歌います。神の民であるイスラエルは、バビロンから解放されて新しい国造りしようとしています。かつての北イスラエルや南ユダ王国のような武力に頼る国造りをするのではない。神は、国を建てる時、勇ましい軍馬の力や勇士の力を必要としません。人間の武力や知恵の謀りごとによって国を建て守るのではありません。かつてのエルサレム滅亡とバビロン捕囚の原因を反省しなければなりません。

 軍事力によって国を建て、守ることは決して出来ません。「主が望まれるのは主を畏れる人、主の慈しみを待ち望む人」です。神に信頼することによって国を建て、国を守るのです。どのような時にも、慌てることなく、静かにして、神に信頼して生きることです。これこそ、アジア・太平洋戦争で惨敗し、その深い反省の上に立って獲得した日本国憲法の軍備によらない国造りと共通します。どんなに軍事力を厚くしても、軍事力によって国を守ることは出来ません。軍事力は国を破壊し滅亡させる力です。神に信頼して生きることです。

 神ご自身が国を守ると約束しています。「主はあなたの城門のかんぬきを堅固にし、あなたの中に住む子らを祝福してくださる。あなたの国境に平和を置き、あなたを最良の麦に飽かせてくださる」。「城門のかんぬきを堅固にし」、「子らを祝福し」、「国境に平和を置き」「最良の麦に飽かせ」てくださると、主なる神の保護と守りと祝福が約束されているのです。新しい年、神の期待に応える歩みをしてまいりましょう。