第81話 国の崩壊のきしみ音が聞こえています

 テレビのニュース番組で、あるデパートが通信販売で売ったクリスマスケーキが大きく崩れて配達されたことが報道されました。グニャッと崩れたケーキの姿が映し出されていました。グニャグニャに崩れたケーキの姿に、わたしは日本の国の崩壊の姿を見る思いがしています。

 最近の新聞、テレビの報道によって、自民党の有力派閥のパーティーの裏金疑惑が報道されています。一部の派閥だけでなく自民党全体に及ぶ腐敗の構造です。検察には全体像を明らかにしてきちんと処分をしてほしいものです。「鯛は頭から腐る」と言われます。政権党の深刻な腐敗を明らかにして摘出することは大切なことです。安倍政権時代から続いてきた立法・司法・行政の三権に及ぶ構造的な腐敗と崩壊の音が聞こえているのです。国会で嘘をつきまくった安倍さんを「国葬」にした岸田さんの責任を見逃してはなりません。責任を取らない人たちで国の存立が崩壊しつつあるのです。

 司法に関わる世界の腐敗も深刻です。司法の独立という基本的な在り方が根本から揺らいでいます。袴田事件では警察のねつ造が原因とされているにもかかわらず、警察と検察のメンツのために再審さえも引き延ばされています。入管業務の中で人が殺され、最近では「大川原化工機」事件では公安警察のねつ造と検察の起訴により拘置中に死ぬ人も出ています。社会全体で基本的人権といのちの価値が決定的に軽んじられています。「人質司法」という言葉さえあるほどです。政治によって検事総長の人事が左右されたり、裁判官が行政に忖度しています。憲法と法が求める正義と公平が根底から覆えり、腐臭がしています。

 大学・教育関係も大きく崩壊しています。日本国憲法の下で制定された教育基本法が大きく改悪されて旧日本への回帰の道が敷かれました。教職員会議から力が奪われて、校長の独裁となり、教師の仕事がブラック企業化しています。菅政権下では6名の学術会議の候補者が拒否され、時の政府の意に適わない人たちの声が拒否されたのです。国立大学は「独立行政法人」となり、教授会の権限が大幅に削られて、理事会に力が移され、文化省の意に適う人が理事長に選出されるようになりました。大学の予算も大幅に削減されて自助努力を求められています。基礎研究などが出来にくい構造になっています。

 沖縄の辺野古沖の埋め立てについて、日本という国の在り方全体が深刻に問われています。裁判で国の代執行が認められたことは民主主義の根幹が揺るがされる出来事です。地方自治が否定され民意が踏みにじられているのです。アメリカにもの申すことの出来ない植民地政府であることを示しています。中国という「敵を作り」、軍事費を倍増してアメリカから爆買いした兵器を琉球諸島に配備しています。軍備を増強し軍拡競争に励み、日本丸は沈没寸前です。

 経済についても語らねばなりません。超低金利の維持と円安政策はこれ以上続けていいのでしょうか。国家予算の三分の一が国債頼みというのは危険水域を越えています。国会の議論を封じる1兆円を超える予備費も危険です。無制限に税金を投入して大阪万博を行うことは、万博を口実にして国家的なバクチ場を造ることです。国民を堕落させ、家族と子らの悲惨を増加させる道です。日本という国の船体が、身をよじらせ、方向を見失い、奈落の底に沈み込もうとしているのではないでしょうか。今回の花はラベンダーとします。(2023/12/29)

第82話 沖縄・辺野古の埋め立て工事の中止を求める

 新聞によると、新年早々、沖縄県辺野古の軟弱地盤に対する工事が始められたとのことです。軟弱地盤に対する設計変更を認めない沖縄県の玉城デニー知事に代わって国が代執行を承認して、防衛省が工事着工に踏み切ったのです。数回にわたって示された沖縄の反対の民意にもかかわらず、辺野古沖に滑走路を作る国の計画を貫こうとしています。工事全体の中止を求めます。

 これは、選挙や県民投票によって示された民意を国家の力で踏みにじる反民主主義、独裁国家の歩みです。岸田首相も含めて自公政権は、外交の場では「自由と法の支配」を売り物としていますが、国内的には独裁・強権政治をしているのです。国と地方自治体とは対等であるにもかかわらず、本来、国がなすべきではない、知事の権限を奪う代執行という(合法を装った)強権を振るって強行しているのです。民主主義と法治主義が踏みにじられています。

 軟弱地盤に対し、防衛省は7万本の杭を打ち地盤改良工事をし、そこに大量の土砂を投入して埋め立てを強行しようとしています。その埋め立てのために、防衛省は沖縄全土から、特に沖縄本島の南部から大量の土砂を調達しようとしています。沖縄本島南部とは、かつての沖縄戦最大の激戦地でした。今も掘り返せば多くの遺骨が出てきます。なお数千人の遺骨が未発見で地中に眠り、細かな遺骨は土砂と弁別できません。その地域の土砂を埋め立てに使おうとしています。死者への冒涜です。「物言わぬ戦没者」を2度殺すような非人道的行為です。

 辺野古の埋め立て工事は、日本の巨額な国費を投じて、美しい沖縄の海の自然を潰して、中途半端な飛行場を建設し米軍に提供しようというものです。計画でも供用開始まで10数年かかるとのことです。その頃には、完成できない不要な存在となり、見捨てられる飛行場となるでしょう。費用を計算して早めに中止し、外交交渉で基地返還に取り組むことです。

 問題は日本国民全体の沖縄の困窮に対する無関心です。あえて無関心を装っているのでしょうか。キリスト者を含めて日本国民すべてに思い起こしてほしいのです。太平洋戦争において沖縄の支払った犠牲の巨大さをです。日本本土でも米軍の猛爆撃によって多くの都市が壊滅的な状況になりました。しかし、沖縄とは段違いです。米軍との市民を含む熾烈な本土決戦が行われ、県民4人に一人が戦没死しています。日本本土の決戦準備のため、国体(天皇制)護持のために、沖縄は捨て石とされたのです。日本基督教団も本土出身の牧師たちは全員本土に避難して沖縄の教会を見捨てました。この事実をしっかり見つめることが必要です。今もなお、沖縄は本土の都合のために見捨てられ、犠牲となっています。これ以上、見過ごしてはなりません。国民全体が立ち上がって、政府の無法・無慈悲な行為を弾劾すべきです。今回の写真は花ではなく、枯れススキとします。(2024/1/12)

第83話 とりあえず政権交代しかありません

 安倍派の政治資金パーティの裏金作りのニュースが毎日、新聞・テレビを賑わわせています。新聞などのマスコミによって見つけられなければ、今も続いていたことでしょう。見つけられ、疑念が示されて、問いただされてからの弁明であり、報告書の修正です。その報告書も世間一般では許されない「不明」の文言の連続です。一般国民の会計報告、納税報告などでは決して許されない言葉です。いつから国会議員は特権階級になったのでしょうか。

 安倍晋三さんが生きている間から自民党政権は、国会を軽視し、国民を侮蔑し続けてきたと言っていいでしょう。安倍さんはモリ(森友学園事件)カケ(加計学園問題)・桜(桜を見る会)などについて国会で嘘をつきまくりました。この安倍さんを引き継いでの菅政権では6名の学術会議への任命を拒否し、学問の自由に大きな傷を付けました。安倍さんを引き継ぐと語って政権についた岸田首相も、安倍さん譲りの闇の支配を続けています。

 岸田内閣は、国会の議論に諮ることなく、安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)という極めて重要な国家の基本方針を、閣議決定で決めてしまったのです。決定的な国会無視です。そして、防衛予算も対GDP比1%から2%へと倍増させて、アメリカから大量の武器の爆買いをしています。その結果、福祉と教育、医療などの分野に回す予算が大幅に削られています。国民は気がつかないのでしょうか。

 安倍元首相の殺害によって、はしなくも浮かび上がったのは旧統一協会と自民党との深い闇の関係です。旧統一協会と自民党の関係は、安倍さんになって始まったのではなく、安倍さんの祖父に当たる岸元首相時代からの関係です。旧統一協会は最初から正体隠しの宗教団体ですが、基本的には韓国の教団で、日本人から巨額の献金と物品の販売益金を得て韓国に送金するための実は反日の団体と言っていいのです。「反共(勝共)」ということで結合したのでしょうが、自民党は旧統一協会の正体を見抜けずに、相互に利用し合う関係が続いてきたのです。この闇の関係は、今も続いています。地方議会のレベルでは明るみにもされず、清算されていません。日本の闇は深まるばかりです。

 このような闇支配の自民党政権には交代していただく以外ありません。わたしは旧民主党の政権が失敗だったとは思っていません。政権交代に伴う試行錯誤は当然あるのです。長期政権は闇を深め、政治の健全度が落ちていきます。もう一度、政権交代を起こしてほしいものです。きちんと立憲主義と民主主義の政治を取り戻す運動を支えていこうではありませんか。今回の写真は希望、前進を表すガーベラとします。(2024/3/1)

第84話 「憲法記念日」に当たって

 「憲法記念日」が巡ってきます。今年、2024年5月3日の「憲法記念日」に当たっての、わたしの想いを記すこととします。近頃の自民党などの政治家の言動を見ると怒りが込み上げてきます。国の基本法である「日本国憲法」を軽視と言うよりも無視している状況です。社会的契約である「憲法の重み」を感じていないと言っていいでしょう。

 第一次安倍政権の時代です。新憲法の規定に即した教育基本法が、2006年に改訂され、公共の精神、道徳心、日本の伝統、愛国心教育が強調されて、教育現場での憲法教育、平和教育が大きく後退しました。この改訂には「日本会議」が大きく関与しています。この教育基本法の改訂について、多くの人たち、マスコミ・ジャーナリストも深い関心を払いませんが、非常に重大な出来事でした。憲法の規定が大きく方向転換させられた出来事でした。公教育において憲法が骨抜きにされたと言っていいでしょう。

 憲法の大事な規定である「政教分離」「信教の自由」がなし崩しになっています。陸海の幹部自衛官がグループで制服着用で靖国神社に集団参拝をしたことが報じられています。その直前には、靖国神社の新宮司に元陸将が就任したことも報じられています。靖国神社は、戦後、宗教法人格を取得して生き延びたのですが、元々は旧陸海軍省の管理する宗教的軍事施設でした。靖国神社に元陸将が宮司となり、制服自衛官が集団参拝することは、戦前の軍とその宗教施設の事実上の復活となっているのです。

 第二次安倍内閣時、2014年に特定秘密保護法が制定されました。行政機関や外交・安全保障に関わること、自衛隊の運用などに関わる事柄に大きく網がかけられて一般市民の目から隠されてしまいました。それらに関わる人たちの適性評価という名目で目隠しされているのです。さらに最近、岸田内閣の下で重要経済安保法も可決されました。民間企業や大学などの研究機関の人たちも機密情報漏洩で逮捕、拘禁される事態になっています。これらは憲法の持つ大切な自由権、思想・良心の自由、学問の自由、表現の自由、知る権利、報道の自由などに深く関わる事柄です。かつての治安維持法に至る道が密かに敷かれているのです。

 憲法九条に関わる事柄は風前の灯です。長年、自衛隊という軍を正当化させるために描いてきた正当防衛論に基づいての最小限の自衛力という論理をかなぐり捨てて、集団自衛権を閣議決定で一気に乗り越えてしまいました。同じく閣議決定で自衛隊の予算を対GDP(国内総生産)比1%から2%へ倍増させて、ミサイルや戦闘機をアメリカから爆買いしています。岸田首相は国賓待遇でアメリカに行き極めて危険な約束をしてきたようです。米軍と自衛隊の統合指揮権を認めたことはアメリカの軍事指揮下に入ったことです。

 これら憲法軽視、無視の現状についての怒りの声がほとんど聞こえてきません。マスコミも大きく報じていません。世論も無関心です。「平和国家日本」は遠い世界になっています。憲法の危機が大きくなり、「日本国憲法」は無用の長物となっています。怒りが込み上げてきます。今回の写真はアザミとします。(2024/4/26)

第85話 「日本国」は、どうなっていくのでしょうか

 寺山修司に「マッチ擦るつかのま 海に霧ふかし/身捨つるほどの祖国はありや」という短い詩があります。かねてから寺山修司には心惹かれるものがありましたが、最近はとみにこの言葉に同感を覚えている状況です。

 裏金問題に揺れる自民党は、抜け穴だらけの政治資金規正法の改正案を自公の数の力で強行突破して裏金問題の処理にフタをしようとしています。幾分かの賃金の上昇があっても、それは一部の人たちだけで、国民全体は急激な物価上昇に打ちのめされ、格差が広がり、家計の見通しがつきません。自衛隊は沖縄県の島々に急速に展開して、米軍の統合指揮下に入って、この後どのように展開していくのでしょうか。能登半島地震による死者数は増え続けており、復興の先は見通せません。自民党と旧統一協会との根深い裏の関係も明らかにされていません。安倍政権以来の自公政権の行ってきたすべてのことは、霧の中、深刻な闇の中です。

 にもかかわらず、国民の意識の側にも霧が深いのです。先日、6月16日(日)に沖縄で県議選があり、玉城デニー知事の与党が敗れ、社民、立憲、共産が議席を減らしました。最近の国政の補選などで自民が敗北したので一安心と思っていましたが、自公が復活したのです。辺野古と沖縄諸島に対する闇が深くなりました。沖縄県民の自立意識の欠如、本土に対する依存意識が、この結果を生み出したのでしょうが、実は日本全体の国民一人ひとりの心の中にある闇が、ここに端的に現れ出ているのではないでしょうか。

 この深刻な闇の支配をもたらしている根源にあるのは、日本人の中に根深くある現世主義と人権への無感覚と言っていいでしょう。理想を掲げて生きるのではなく、「今さえよければ」という目先の利だけで生きる生き方が、今日の自公政権の闇の構造を生み出しているのです。自他の人権、個人としての尊厳を認め合って生きるのではなく、個人を否定した家族主義、天皇至上主義へと至る保守的な考え方が、福祉や教育に資金を回さず、最も大切な人に関わる分野がブラック企業化しています。国民の生活を守らずして、国防などはありません。

 人権無視が冤罪を産み、男女平等や選択的夫婦別姓などを隅に追いやり、日本人全体を悲惨にしています。世界の人権への開かれた道を歩まず、世界の孤児となり、日本そのものを闇の中に封じ込めているのです。日本人の中に蔓延している現世主義と人権への無感覚が、日本の将来と大切な政策的な課題とを霧の中に、闇の中に落とし込んでいるのです。

 命を捨てるに値する祖国など、わたしにはどこにも見いだせません。マッチ擦る一瞬さえも、強力な闇の力が光を押し包んでしまっているのです。今回の写真はテッセン、クレマチスとします。(2024/6/19)

第86話 「報復・復讐」をしてはならない!

 最近の戦争を見ていると、「報復・復讐」の愚かさを真剣に考えさせられます。ロシアに攻撃されたウクライナの報復戦争がまだ継続しています。先制攻撃されたと言われる側が「正義」となり、正義のための戦争が継続されて多くの人たちが死へと追いやられ、結末が見えません。パレスチナの「ハマス」に先制攻撃されたと言われているイスラエルの報復戦争が、ハマスの絶滅という正義を掲げてガザに住む人たちを絶滅の淵に追いやっています。

 実は、先制攻撃と言われるものの多くに問題があります。ある一定の時間枠の中では「先制攻撃」と見ることも出来ますが、相当に長いスパンと多角的な視点で歴史を見る時、いろいろな問題が見えてきて、一方的な正義の主張にはクビをかしげることも多いのです。

 むしろ、「正義」かどうかと言うよりも、現実には双方に多くの悲惨な大量の血が流されていることです。戦争は、どのように言っても「不法」です。殺し合いです。この殺し合いの理屈が正義という報復・復讐合戦なのです。しかし、とんな戦争にも正義などはありません。学校や病院が攻撃され、幼い子どもたちや無力な女性たちが無残に残酷に殺されていく重い事実を見たら、正義の報復など一切口に出来ません。

 事柄が輻輳し、「解」がすぐに見つからないような時には、原点に立ち戻ることです。旧約聖書(ユダヤ教のタナク)が語る十戒では、無条件に「あなたは、殺してはならない」(第六戒)と命じています。十戒は、決して個人的倫理だけでなく、契約の民であるイスラエルを拘束する社会規範でもあります。それだけでなく、十戒は最も基本的に「すべての人、人類」を規制する「神の掟」と言えるものです。人を殺すことは、神によって禁じられているのです。殺し合いとしての戦争は、神への反逆、最大・究極の罪悪、犯罪です。

 新約聖書では「報復・復讐」が明確に禁じられています。少し長いですが引用します。「あなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。『復讐はわたしのすること、わたしが報復する』と主は言われると書いてあります。『あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる。』悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」(ローマ書12:19-21)。報復は神の主権事項です。人が神の主権の領域に足を踏み入れるところで、最大・究極の罪悪に陥り、解決の道を見失うのです。

 「すべての人と平和に暮らす」。これが、神が人に求めておられることです。殺し合いとしての戦争をしないというだけのことではありません。もっと豊かな意味を持つ言葉です。「あなたの敵」をも含めての「すべての人」です。すべての人と互いに赦し合い、生かし合う世界を構築することが求められているのです。わたしたちは、このような平和の世界の到来を追い求め、祈り求めていきましょう。今回の花はハイビスカスとします。(2024/7/12)